白豚王子育成計画〜もしかして私、チョロインですか?〜
発声練習編
「ねね、ねぇ、リイナ! 見て! 見てる?」
あぁ、今日も脂肪が弾んでいる。
だけど以前の「ぼよよん」が「ぽよん」になったのは、この一ヶ月の運動と食生活の成果の賜物だろう。なんせ、あの少し走っただけで「膝が痛い」と言っていた王子が、かれこれ体感十分くらい走り続けているのだから。
「えぇ、見てます。エドワード様すごいですね」
若干棒読み感はあるものの、きちんと褒める。
歩くのと大差ない速さであるとはいえ、一応走っているのだ。とりあえず痩せればいいのだから、消費カロリーが多い運動が出来るようになったのことは、目覚ましい進歩だ。
「グフフ……リ、リイナにほほ、褒められちゃった……こ、これで『いけめん』まで、もも、もうすぐかなぁ?」
しかし残念ながら――その答えは否である。
「……エドワード様。少々お話が」
私が神妙な面持ちで声をかけると、彼は私のそばで立ち止まった。
「グフゥ……なな、なんだい? リイナ?」
流れる汗がとても爽やかだが、まだ運動を始めて十分である。それも毎日のお風呂と保湿のおかげで、肌が綺麗になってきている証拠だろう。
「確かに少しずつですが、エドワード様の見た目は改善されつつあります」
「グフフ、ででででしょう?」
得意げに鼻を鳴らす子白豚。
「ですが、気持ち悪い話し方をする男はただの変態です」
「ぼぼぼ僕の話し方は気持ち悪かったの?」
「だから走りながら、発声練習をしましょう」
しょんぼりする王子なんて今更だ。
いつか誰もが認める『イケメン』になれば、王子自身だって嬉しいはず!
ちょっぴり胸を締める罪悪感を前向きに捉え、私が意気揚々と宣言すると、王子が「うーん」と腕を組んだ。
「ででで、でも……走りながら何を言えば、いいいいの?」
「えーと、何でもいいと思うんですけど……」
うーん……走り込みといえばスポ根漫画。それだとよく学校名を掛け声にしていたよね。
だったら、今の場合は――――
「『ランデール万歳っ!』とかですかね?」
「そそ、それってちょっとどど、どうなの?」
「どうと言いますと?」
私が聞き返すと、エドワード様は周りの衛兵さん達の目を気にしながら、コソコソと耳打ちしてきた。