白豚王子育成計画〜もしかして私、チョロインですか?〜
「エドの? エドは何も悪いことしてないのに?」

 そう。男装するのも、友達のフリをするのも、私の独断。決して彼に頼まれたからではない――というか、彼に頼まれたことなんて、呼び方くらいしかないのだが。

 それなのに、ショウはため息を吐いてしまう。

「きみ、前世でどんな生活してたんだ? 当たり前だろう。きみは王子の婚約者として、この城の出入りが許されているんだから。きみが何か問題起こしたら、宰相のお父さんと王子の責任になるんだぞ」

 そう言われたら、私は「むむむ」と押し黙るしかない。
 エドはもとより、お父様にだって良くしてもらっているのだ。迷惑をかけたいわけではない。

 でも――と、私が俯いていると、「仕方ないな」とショウが革袋の中から何かを差し出してくる。

「ほら、これでも食べて元気だせ」

「こ、ここ……これは……?」

 どこぞの白豚王子じゃないが、思わず吃ってしまう。

 とても薄い揚げ物だった。噛めばサクッと鳴るに違いないほどの薄さと軽さ。キラキラ輝く白い粒は、多分塩。おまけに点々と緑の粉末がまぶしてあるそれは――

「ポ、ポテチ……」

「ふっ、しかも青のり味風味さ」

 ポテトチップス。ジャンクフードを嗜む人であれば尚更、なかなか食べれない事情がある人からしてみれば至福のご馳走。かつて私も、同世代の子供たちが食べている姿を見ては、何度親にねだったことだろうか。食事制限のために、私は何度涙を呑んだことだろう。
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