白豚王子育成計画〜もしかして私、チョロインですか?〜
木製質素な長テーブルと、長椅子と、端にいくつも置かれている木箱がロッカー代わりだろうか。漫画で見かける運動部の部室をファンタジーにアレンジしたような部屋には、何とも言えない異臭が充満していた。
うん、なんだろうね。この臭い。汗臭いというかイカ臭いというか。盗賊たちの洞窟に似た臭いがする。不快です。
だけど「我慢、我慢」と言い聞かせて、木箱を開けようとした時だった。
「何をしている⁉」
「え?」
突如背後から掛けられた男の声に萎縮し、どうしようと振り向かずにいると、肩をガシッと掴まれる。
「このコソドロめ!」
どこをどうされたかわからない。だけどただ腕が痛くて、悲鳴を上げかけると、
「リイナあああああああああ!」
そこからは、もっと訳がわからなかった。
エドに呼ばれる声が聞こえた――そう思った時には、もう痛くも何ともなくて。ようやく振り返れば、大男が王子に投げ飛ばされている瞬間だった。一本背負い。実際にそうだとわかって見たのは漫画のみ。だけど素人目から見ても、それは綺麗な技だった。
「リリリリ、リイナ! 大丈夫?」
背中を床に打ち付けられた大男――格好からして兵士さんの一人だろう。彼が目を白黒させていることなんか厭わず、白い子白豚みたいな王子が私に詰め寄ってくる。
「怪我は? 大丈夫? どこも痛い所ない?」
近い近い。木箱があってこれ以上下がれないんだから、転んじゃうってば。
「医務官呼ぶ? 動悸は? 目眩はする? 熱とか出てない?」
「ええええええエド? 落ち着いて? 私大丈夫――――」
「君のことを襲おうとするなんて……安心して。もうこの男は二度と明るい所を歩けないようにきちんと処罰を下して――――」
「待って待って待って! 本当に待って⁉」
ひとりヒートアップするエドの服を掴んで揺さぶると、彼が異様に優しい笑みを浮かべながら、私の手に手を重ねてきた。
「大丈夫だよ。君に傷を付ける僕以外の男なんて、きちんとこの世から抹消するからね」
「だから本当に待ってください全部私が悪いんですううううううう!」
微妙なニュアンスの違和感を気にする暇もなく、私が泣き叫ぶこと、体感十分。
それは、エドに事情を説明し、納得してもらうまでにかかった時間だ。
うん、なんだろうね。この臭い。汗臭いというかイカ臭いというか。盗賊たちの洞窟に似た臭いがする。不快です。
だけど「我慢、我慢」と言い聞かせて、木箱を開けようとした時だった。
「何をしている⁉」
「え?」
突如背後から掛けられた男の声に萎縮し、どうしようと振り向かずにいると、肩をガシッと掴まれる。
「このコソドロめ!」
どこをどうされたかわからない。だけどただ腕が痛くて、悲鳴を上げかけると、
「リイナあああああああああ!」
そこからは、もっと訳がわからなかった。
エドに呼ばれる声が聞こえた――そう思った時には、もう痛くも何ともなくて。ようやく振り返れば、大男が王子に投げ飛ばされている瞬間だった。一本背負い。実際にそうだとわかって見たのは漫画のみ。だけど素人目から見ても、それは綺麗な技だった。
「リリリリ、リイナ! 大丈夫?」
背中を床に打ち付けられた大男――格好からして兵士さんの一人だろう。彼が目を白黒させていることなんか厭わず、白い子白豚みたいな王子が私に詰め寄ってくる。
「怪我は? 大丈夫? どこも痛い所ない?」
近い近い。木箱があってこれ以上下がれないんだから、転んじゃうってば。
「医務官呼ぶ? 動悸は? 目眩はする? 熱とか出てない?」
「ええええええエド? 落ち着いて? 私大丈夫――――」
「君のことを襲おうとするなんて……安心して。もうこの男は二度と明るい所を歩けないようにきちんと処罰を下して――――」
「待って待って待って! 本当に待って⁉」
ひとりヒートアップするエドの服を掴んで揺さぶると、彼が異様に優しい笑みを浮かべながら、私の手に手を重ねてきた。
「大丈夫だよ。君に傷を付ける僕以外の男なんて、きちんとこの世から抹消するからね」
「だから本当に待ってください全部私が悪いんですううううううう!」
微妙なニュアンスの違和感を気にする暇もなく、私が泣き叫ぶこと、体感十分。
それは、エドに事情を説明し、納得してもらうまでにかかった時間だ。