白豚王子育成計画〜もしかして私、チョロインですか?〜
今、何をしているかというと――――
一ヶ月後に、王城でパーティーが開催されることになった。大きな外交が上手くいったことへの慰労会みたいなものらしい。そこへ、当然王子である元白豚王子のエドワード=ランデール殿下と、宰相の娘であり、王子の婚約者である私『リイナ=キャンベル』も出席することになったのだ。
「うーん……ねぇ、リイナ。そんなにダンスの誘い方って大切なのかな?」
「どういうことですか?」
立ち上がったエドが、軽く足を曲げ伸ばしする。今日も律儀に職務を果たしている近衛兵さんやダンスの先生たちの視線を気にしながら、エドは私に耳打ちしてきた。
「お膳立てよりも、メインの方が大切だと思うんだけど……」
ギクッッッ!
私の肩が思わず上がる。ダンスパーティのメインとは、すなわちダンス。
……ちょっと振り返ってみてほしい。
私は日本という国で、ほとんどの日々を入退院に費やしていた二十代半ばの喪女だったのだ。この際病気のことすら関係ないだろう。普通の人生を送っていたとしても、いつどこで社交ダンスなんて覚える機会があった?
「そ、それは……足を引っ張ってしまうこと、大変申し訳なく――――」
「いやいやいや! そういうことが言いたいんじゃないんだよ、リイナ。むしろ僕が手取り足取り教えることが出来て、挙げ句に転びそうになったリイナに抱きつかれちゃったりして約得でしかないんだけど」
早口で手をワキワキさせて何言ってんだこいつは?
だけど、一息ついたエドが私に微笑を向けてきた。
「あーいうパーティの花って、女性だと思うんだよね」
「……どういうことですか?」
彼の言いたいことがわからず、再び同じ言葉を投げかけると、彼は私の長い髪をすくい、そっと口づけた。口づけた?
「着飾ったリイナは、絶対に綺麗だと思うんだ。それをより引き立てるのが男の僕の役目であって、僕がカッコよく見栄を張る必要はないと思うんだよ」
「お、お気遣いなく……」
思わず顔が熱くなる。自分のことなんて。まるで考えてなかったから。
確かに、この『リイナ=キャンベル』は可愛いから、着飾ったらもしかして男の人にチヤホヤされてしまうのかもしれないけど……。
でも、もし私が他の男の人からもモテるのだとしたら。
確か、外交相手の他国の王子も顔を出すという噂もある。もし、そんな相手から見初められることがあれば。
――別に、恋の相手はこの王子でなくても構わない……?
あくまで、わずかな可能性のひとつではあるけれど。
ふと見えたそんな現実に私が視線を外すと、エドが小さく苦笑する。
「精霊に愛された人は、最期に奇跡を起こすっていうじゃない?」
精霊ってアレだ。転生してから数ヶ月で得た知識によれば、貴族が魔法を駆使するために力を貸してくれるっていう妖精だ。人間の目には見えないけれど、自然にも物にも宿っている……なんか付喪神的な要素もある存在らしい。
でも、なんで今そんな話……?
「人は魂を失ってしまったら、その身体が朽ちてしまうからね。それを防ぐために、他の魂を無理やり入れてしまうっていうおとぎ話。その魂が入れ替わった人は霊人として、世界に未知なる知識をもたらし、世界の発展を促すっていうさ」
そこまで話してから、エドは「まぁ、リイナなら知っていただろうけど」と付け足す。
一ヶ月後に、王城でパーティーが開催されることになった。大きな外交が上手くいったことへの慰労会みたいなものらしい。そこへ、当然王子である元白豚王子のエドワード=ランデール殿下と、宰相の娘であり、王子の婚約者である私『リイナ=キャンベル』も出席することになったのだ。
「うーん……ねぇ、リイナ。そんなにダンスの誘い方って大切なのかな?」
「どういうことですか?」
立ち上がったエドが、軽く足を曲げ伸ばしする。今日も律儀に職務を果たしている近衛兵さんやダンスの先生たちの視線を気にしながら、エドは私に耳打ちしてきた。
「お膳立てよりも、メインの方が大切だと思うんだけど……」
ギクッッッ!
私の肩が思わず上がる。ダンスパーティのメインとは、すなわちダンス。
……ちょっと振り返ってみてほしい。
私は日本という国で、ほとんどの日々を入退院に費やしていた二十代半ばの喪女だったのだ。この際病気のことすら関係ないだろう。普通の人生を送っていたとしても、いつどこで社交ダンスなんて覚える機会があった?
「そ、それは……足を引っ張ってしまうこと、大変申し訳なく――――」
「いやいやいや! そういうことが言いたいんじゃないんだよ、リイナ。むしろ僕が手取り足取り教えることが出来て、挙げ句に転びそうになったリイナに抱きつかれちゃったりして約得でしかないんだけど」
早口で手をワキワキさせて何言ってんだこいつは?
だけど、一息ついたエドが私に微笑を向けてきた。
「あーいうパーティの花って、女性だと思うんだよね」
「……どういうことですか?」
彼の言いたいことがわからず、再び同じ言葉を投げかけると、彼は私の長い髪をすくい、そっと口づけた。口づけた?
「着飾ったリイナは、絶対に綺麗だと思うんだ。それをより引き立てるのが男の僕の役目であって、僕がカッコよく見栄を張る必要はないと思うんだよ」
「お、お気遣いなく……」
思わず顔が熱くなる。自分のことなんて。まるで考えてなかったから。
確かに、この『リイナ=キャンベル』は可愛いから、着飾ったらもしかして男の人にチヤホヤされてしまうのかもしれないけど……。
でも、もし私が他の男の人からもモテるのだとしたら。
確か、外交相手の他国の王子も顔を出すという噂もある。もし、そんな相手から見初められることがあれば。
――別に、恋の相手はこの王子でなくても構わない……?
あくまで、わずかな可能性のひとつではあるけれど。
ふと見えたそんな現実に私が視線を外すと、エドが小さく苦笑する。
「精霊に愛された人は、最期に奇跡を起こすっていうじゃない?」
精霊ってアレだ。転生してから数ヶ月で得た知識によれば、貴族が魔法を駆使するために力を貸してくれるっていう妖精だ。人間の目には見えないけれど、自然にも物にも宿っている……なんか付喪神的な要素もある存在らしい。
でも、なんで今そんな話……?
「人は魂を失ってしまったら、その身体が朽ちてしまうからね。それを防ぐために、他の魂を無理やり入れてしまうっていうおとぎ話。その魂が入れ替わった人は霊人として、世界に未知なる知識をもたらし、世界の発展を促すっていうさ」
そこまで話してから、エドは「まぁ、リイナなら知っていただろうけど」と付け足す。