白豚王子育成計画〜もしかして私、チョロインですか?〜
「我ら第一王子直属部隊! キャンベル令嬢を誘拐した愚行、ここで改めさせてもらう!」
男の騒ぐ声は、怖い半分、不快半分。その中でガチャガチャ、キンキン、バタバタした様子に私が縮こまっていると――――
「リイナ!」
聞き覚えのある声に、顔を上げると。
「リイナ……無事で良かった……」
フゥフゥと荒い息遣いが変態チック。汗も掻いて醜さもアップ。だけど、王子のはずなのに先頭を切って駆けてくる彼に、私は自然と彼の名前を呟いていた。
「エドワード……様?」
「うん……た、助けに来たよ……」
安堵した様子の白豚がグヒグヒと鼻を鳴らしながら、私のロープを解いてくれる。
「さ、さぁ……早くここから離れよう」
「は、はい……」
差し出されたまんまるとした手を握ると、やっぱり汗ばんでいて気持ち悪かった。でも思いの外強い力で引っ張られ、払うに払えず。
「もう怖いことは何もないからね。リイナは安心して大丈夫だからね。ゆっくりお風呂にはいって今日のことはさっさと忘れていいからね。あ、お菓子食べる? 今は持ってないけどまた明日――――」
最低限の言葉しか返さない私に、今度は途端に口早だけど、王子はずっと声をかけ続けてくれた。
だけど、むさ苦しい男たちが倒れる洞窟の中を抜けながら、私は振り返る。
白豚王子ことエドワード様。ありがとう。
だけど私、忘れたくても忘れられそうにありません。
――あぁ、あの焼きおにぎり。食べたかったなぁ……。