白豚王子育成計画〜もしかして私、チョロインですか?〜
そして、私は思った――夢は待っているだけじゃ、叶わない。
前世ではやりたくても出来ないことがたくさんあったのだ。それを出来る身体があるのなら――――女は度胸。動いてナンボ。
「リ、リイナ……具合悪い所、ない……?」
おずおずと、白豚王子が私に尋ねてくる。どうやら、あの盗賊たちの処理を一通り終えてから、休むことなく、私の屋敷にやってきたらしい。
言っていた通り、また可愛らしい包装のお菓子を持ってきて。
誘拐される前に食べたけど、すごく美味しいクッキーだった。色んなお花模様が可愛らしく、味も上品。この世界のご飯はどうにも大雑把な味付けでうんざりしていたけど、王子の持ってきてくれたお菓子は確かに美味しかった。
ベッドから起きた私は、まじまじと彼の顔を見た。うん、やっぱり醜い。こんな王子様とキスをしたって、吐き気しか感じないだろう。
「どどど、どうしたの? どこか……痛い?」
「……エドワード様」
「ううう、うん?」
「私のこと、お好きですか?」
優しい婚約者にそう尋ねると、ただでさえ赤らんでいる顔が、もっと赤くなって。正直二重顎しか気にならないけど、その首は縦に大きく頷いて。
「……ありがとうございます」
王子様が、私のことを好いてくれているのならば――私の理想の邪魔をしているのは、一つだけ。下手にワイルドな夢を見るより、こっちを改善した方がよほど堅実だ。
「ならば、お願いがあるのですが」
「ななな、何だろう? リイナのたた、頼みなら……僕は何だってするよ?」
「言質は取りましたからね?」
私は口角は、自然と上がっていた。
そう――――私は、ようやく気が付いたのだ。
「では、明日から運動しましょう」
「え?」
この白豚王子をイケメンに仕立てあげれば、全ては丸く収まるのだと。
「痩せてカッコよくなって下さいと言っているのです」
前髪が邪魔でよく見えないが、目を丸くしたであろう白豚王子に、私は容赦なく笑みを向けた。
「いつお時間取れますか?」
すると、王子はしばらく逡巡した後、ボソリと呟いた。
「……リイナが、一緒に付き合ってくれるのなら」