白豚王子育成計画〜もしかして私、チョロインですか?〜
元病人リイナ=キャンベル。たとえ生活の中心であった婚約者が遠方へ行こうとも、ずっと引きこもってるわけではありません――――と言っても、過保護な親が学校へ通うことを許してくれないので、行ける場所はせいぜい城くらい。家庭教師の授業がない時にお父様に付いていって、仕事の間自由に散策していていいよ、てくらいです。ちなみに街を一人歩きするのはもってのほか。護衛を雇う話も「僕以外の男と?」と婚約様が反対されたのでナシとのこと。
そんなわけで、今日も自由なようで不自由な私の行く先は、唯一と言っていいお友達の所。
「今日のおやつは何かな~」
焼きおにぎりにお味噌汁にポテトチップス。おはぎにお好み焼きに、こないだはスイートポテト。芋類が多いが、それは彼が芋剥き係だからご愛嬌。
「そろそろ芋ようかんとか出て来るのかなぁ」
軽い足取りでいつもの厨房裏へ向かった時である。
「ショウさー……」
この時間ならいつも大量の芋の皮むきをしているはずの見習いコックが、誰かと話し込んでいた。木々の生い茂る城の外壁から少し離れた場所。神妙な面持ちで話しているかと思いきや、相手の男がショウの襟ぐりを掴み上げて――――
「ちょっと! 何しているの?」
駆け寄りながら声を上げる。すると、ショウと話していた相手の男は茂みの中へと逃げていった。「ふぅ」と一息吐いたショウが、こちらを向く。
「キャンベル令嬢ともあろう方が、そんなドタドタとはしたないのでは?」
「なっ。仕方ないでしょ! お友達の危機だったんだから!」
「友達?」
目を丸くしたショウが、自身を指差す。
「もしかして、俺のこと?」
「当たり前――――」
同意しかけて、息を呑む。
その反応。もしかしてショウは私に気があったのでは? 少女漫画でよくあったやつだ。
ほら、幼馴染だったり腐れ縁ぽい感じの男の子が実はヒロインのことが好きで、主人公たちの恋を応援しているように見せかけつつも、内心葛藤しているやつ。そしてたいていヒロインに告白するも「やっぱりあの人じゃなきゃ」と振られ、主人公たちの結婚式で少し悲しそうに花びら投げているあれだ。そして人気投票でちゃっかりしっかり一位獲る人。なんやかんや、私もそのポジショニングキャラが大好きだったクチである。
あーそうか。そのシチュエーションか。まさにヒロインから「友達」と断言されちゃって、わかっていたはずなのにショック受けちゃっているやつだ。
「ご、ごめんなさい……私には心に決めた人が……」
「あの……一人で盛り上がるのやめてくんない? なんかすごく俺に失礼な妄想繰り広げていただろう?」
ジト目で睨んでくるも、きっと照れ隠し。
「シュウさんの気持ちは嬉しいけど、あの王子相手に婚約破棄は難しい――」
「もういい喋るな何を思ったのか十分理解した。俺とリイナちゃんは生涯仲良しお友達、オーケイ?」
「……オーケイ」