白豚王子育成計画〜もしかして私、チョロインですか?〜
まぁいっか。そんな気持ちで、私はエドからの猛烈なラブレターについて愚痴った。一枚一枚が重いこと。頻度が多すぎること。そして送料という名の無駄遣いが不安なこと。
すると、ショウが大笑いしだす。
「送料? 御令嬢がチンケな心配してんなぁ」
「いや、でも大事でしょ? 日本みたいに切手貼ってポストにポイッじゃないだろうし。隣の国って、馬車で三日はかかるって聞いているよ?」
「きみ、この世界の郵送事情知ってる?」
「そこまで勉強してないです」
日々少しずつ本を読んだり、家庭教師に教わっていたりするも、所々抜けがある。
だって、向こうは私が異世界の住人だなんて知らないのだ。この世界における知識が赤子同然だなんて思わない。この世の常識は、当然知っていると思った上で授業が進められる。
「家庭教師ついているんだろう? どんなこと勉強しているんだ?」
「マナーとか、各地方についてとか、男の人の喜ばせ方とか……」
「最後、なんて言った?」
聞くな! 頼むから聞き流して!
どうにも淑女の嗜みの一貫とやらで、貴族令嬢御用達の学問となっているらしい。その内容、推して知るべし。
「と、とにかく! なんか知りたいことを思うように教えてもらえないから、私も困っているの! 下手に中身が異世界人だなんてバレたら大変だし……」
「わかったわかった。そんな赤くなんなって!」
「う、うるさいやいっ」
ショウの肩を押すと、彼がまたケラケラと笑う。私は常に笑われているような……。私がむくれていると、ひとしきり笑い終えたショウが言った。
「主要都市に、神殿っていうのがあるんだよ」
その説明は、とてもわかりやすかった。
「その名前の通り神様を祀ってたりするんだけど、同時に転送陣っていうのが設置されていてな。その陣がある所同士だと、特殊な魔法で空間転移ってのが出来るわけ。安全性の問題で人は転移できないらしいけど」
「よくある異世界転生のチート能力的な?」
「先人の『霊人』様にそんな魔法使える人がいたんじゃないか? 実際にそこまで万能じゃないが、俺の知り合いでも短距離の瞬間移動ができるやついるし」
「え? 他にも転生した人知っているの?」
ショウは元盗賊だし、魔法が使える貴族の知り合いはいないだろう。
そう思って訊くと、彼は「あー」とこめかみを掻いた。
「いや……あいつは普通にこの現地人ってやつだな。没落した貴族が盗賊まで身を落とす……なんて、いかにもファンタジー世界じゃないか」
「それはそうだけど……」
「まぁ、ともかく詳しい歴史まで俺は知らん。気になるなら、適当な理由つけて家庭教師にでも聞いてみな」
ショウが言うことはごもっともだが、私はモグモグしながら口を尖らせる。
「その適当な理由付けがいつも難しいんだけどなぁ」
「まぁ、頑張れ」
気のない応援のち、ショウもお茶を一口飲んで、
「首都ではその装置、一日三回起動されているらしい。それに毎回手紙を乗せているんだと思うぞ。城に定期連絡の書簡もあるだろうし、俺もたまにだけど、妹に手紙を出せるくらいの値段だ。王子としてもきみが思うほどの手間や負担じゃないんじゃないか?」
しっかりと本筋に話を戻してくれる辺り、なんやかんや元はきちんとした大人だっだんだぁ、なんて思ったりもして。そんな優しさに、私はいつも甘えてしまうのだけど……今、なんて言った?
「ショウさん、妹いるの?」
「おー。いるぜ。この世界の。二個下のすっごく可愛い子」
あ、なんかすっごく嬉しそう。これは間違いない、シスコンってやつだ。
すると、ショウが大笑いしだす。
「送料? 御令嬢がチンケな心配してんなぁ」
「いや、でも大事でしょ? 日本みたいに切手貼ってポストにポイッじゃないだろうし。隣の国って、馬車で三日はかかるって聞いているよ?」
「きみ、この世界の郵送事情知ってる?」
「そこまで勉強してないです」
日々少しずつ本を読んだり、家庭教師に教わっていたりするも、所々抜けがある。
だって、向こうは私が異世界の住人だなんて知らないのだ。この世界における知識が赤子同然だなんて思わない。この世の常識は、当然知っていると思った上で授業が進められる。
「家庭教師ついているんだろう? どんなこと勉強しているんだ?」
「マナーとか、各地方についてとか、男の人の喜ばせ方とか……」
「最後、なんて言った?」
聞くな! 頼むから聞き流して!
どうにも淑女の嗜みの一貫とやらで、貴族令嬢御用達の学問となっているらしい。その内容、推して知るべし。
「と、とにかく! なんか知りたいことを思うように教えてもらえないから、私も困っているの! 下手に中身が異世界人だなんてバレたら大変だし……」
「わかったわかった。そんな赤くなんなって!」
「う、うるさいやいっ」
ショウの肩を押すと、彼がまたケラケラと笑う。私は常に笑われているような……。私がむくれていると、ひとしきり笑い終えたショウが言った。
「主要都市に、神殿っていうのがあるんだよ」
その説明は、とてもわかりやすかった。
「その名前の通り神様を祀ってたりするんだけど、同時に転送陣っていうのが設置されていてな。その陣がある所同士だと、特殊な魔法で空間転移ってのが出来るわけ。安全性の問題で人は転移できないらしいけど」
「よくある異世界転生のチート能力的な?」
「先人の『霊人』様にそんな魔法使える人がいたんじゃないか? 実際にそこまで万能じゃないが、俺の知り合いでも短距離の瞬間移動ができるやついるし」
「え? 他にも転生した人知っているの?」
ショウは元盗賊だし、魔法が使える貴族の知り合いはいないだろう。
そう思って訊くと、彼は「あー」とこめかみを掻いた。
「いや……あいつは普通にこの現地人ってやつだな。没落した貴族が盗賊まで身を落とす……なんて、いかにもファンタジー世界じゃないか」
「それはそうだけど……」
「まぁ、ともかく詳しい歴史まで俺は知らん。気になるなら、適当な理由つけて家庭教師にでも聞いてみな」
ショウが言うことはごもっともだが、私はモグモグしながら口を尖らせる。
「その適当な理由付けがいつも難しいんだけどなぁ」
「まぁ、頑張れ」
気のない応援のち、ショウもお茶を一口飲んで、
「首都ではその装置、一日三回起動されているらしい。それに毎回手紙を乗せているんだと思うぞ。城に定期連絡の書簡もあるだろうし、俺もたまにだけど、妹に手紙を出せるくらいの値段だ。王子としてもきみが思うほどの手間や負担じゃないんじゃないか?」
しっかりと本筋に話を戻してくれる辺り、なんやかんや元はきちんとした大人だっだんだぁ、なんて思ったりもして。そんな優しさに、私はいつも甘えてしまうのだけど……今、なんて言った?
「ショウさん、妹いるの?」
「おー。いるぜ。この世界の。二個下のすっごく可愛い子」
あ、なんかすっごく嬉しそう。これは間違いない、シスコンってやつだ。