白豚王子育成計画〜もしかして私、チョロインですか?〜
それはあまり会いたくない相手。誰が悪いという話でもないのに、なんだか会いにくくなってしまった相手。
――本当にショウさんとは何もないんだけどな。
ただ私がわからないのが、どうしてエドが私相手に嫉妬したのだろうということ。
私が『リイナ』じゃないって知っていたのなら、あんなに怒る必要はないはずなのに。
「男の人の気持ち、わからないなぁ」
私が『リイナ』じゃないと割り切りがついていないのか。
はたまた『リイナ』の見た目が他の人と親密に交流するのが許せないのか。
前世でまともな恋愛ひとつしたことない私からすれば、色々な事情が混み合った王子様の心境など、まるで想像ができなくて。
思わず苦笑すると、「お嬢様」と再び不安そうに声をかけられる。
「はい、どうぞ」
私が了承の声をかけると、扉を開けたメイドさんが一礼する。その手には簡易な紙箱を持っていた。
「僭越ながら、旦那様も不在のためわたしが中身を確認させていただきました」
そして開かれると、薄布に何かが包まれている。メイドさんがそれを開くと、中には緑色の餡が乗ったお団子が入っていた。
「ずんだ餅?」
「わたしは初めてみる代物ですが……ご許可をいただけましたら、毒味をさせていただけないでしょうか? ショウというお嬢様の友達と名乗る方がお持ちした物だとはいえ、あまりにも――」
「大丈夫大丈夫。いつもおやつくれる人だから」
きっと屋敷に伏せている私を心配して持ってきてくれたのだろう。ショウさんには何も事情が話せていない。そもそも、不本意にも王子の怒りを買ってしまっているのだ。ただでさえ先輩から邪険にされていたのに、余計に居心地が悪くなったりしてないかな。
せめて私から説明と謝罪をしたいけど……それをエドに知られたら、どうなるのだろう。距離を取って話せば許されるのだろうか。手紙なら大丈夫? 誰かに言付けを頼むのは?
わざわざ持ってきてくれたお団子のお礼すら言えていないのだ。あんなお兄ちゃんみたいに優しくしてくれる人に対して、私から何も言わないのも不義理すぎやしないだろうか。
「お嬢様……?」
考え込んでいた私にメイドさんから声がかかる。それに私はもう一度「大丈夫」と言って、手が汚れることも厭わず、お団子を掴み食べようとした。
口を開き、一口でパクリと行こうとした瞬間。横からビュンッと風が吹いたような気がした。次の瞬間気がついたのは、何かにお団子を掻っ攫られたということ。
何が――――私が視線で追うと、いつも窓辺に遊びに来る小鳥が、床に転がったお団子をくちばしで突付いていた。何度かツンツンとした後、お団子の一部をハクッと食べてしまう。
その様子を見て、私は思わず吹き出した。
「食いしん坊な小鳥さん――――」
だけど、その和やかさは数秒も続かなかった。小鳥がお団子を美味しそうに食べだしたと思いきや、動きが急に止まり、コテンと横に倒れてしまって。
「え? ちょっと――――」
「お嬢様、お近づきになられない方が――――」
メイドさんの制止を払い、私は小鳥に駆け寄る。その場にしゃがむと小さく痙攣しているのがわかった。だけど、それもすぐに止まる。私がそっと両手で持ち上げると、その小鳥は徐々に冷たくなろうとしていた。
「嘘……嘘でしょ……」
――本当にショウさんとは何もないんだけどな。
ただ私がわからないのが、どうしてエドが私相手に嫉妬したのだろうということ。
私が『リイナ』じゃないって知っていたのなら、あんなに怒る必要はないはずなのに。
「男の人の気持ち、わからないなぁ」
私が『リイナ』じゃないと割り切りがついていないのか。
はたまた『リイナ』の見た目が他の人と親密に交流するのが許せないのか。
前世でまともな恋愛ひとつしたことない私からすれば、色々な事情が混み合った王子様の心境など、まるで想像ができなくて。
思わず苦笑すると、「お嬢様」と再び不安そうに声をかけられる。
「はい、どうぞ」
私が了承の声をかけると、扉を開けたメイドさんが一礼する。その手には簡易な紙箱を持っていた。
「僭越ながら、旦那様も不在のためわたしが中身を確認させていただきました」
そして開かれると、薄布に何かが包まれている。メイドさんがそれを開くと、中には緑色の餡が乗ったお団子が入っていた。
「ずんだ餅?」
「わたしは初めてみる代物ですが……ご許可をいただけましたら、毒味をさせていただけないでしょうか? ショウというお嬢様の友達と名乗る方がお持ちした物だとはいえ、あまりにも――」
「大丈夫大丈夫。いつもおやつくれる人だから」
きっと屋敷に伏せている私を心配して持ってきてくれたのだろう。ショウさんには何も事情が話せていない。そもそも、不本意にも王子の怒りを買ってしまっているのだ。ただでさえ先輩から邪険にされていたのに、余計に居心地が悪くなったりしてないかな。
せめて私から説明と謝罪をしたいけど……それをエドに知られたら、どうなるのだろう。距離を取って話せば許されるのだろうか。手紙なら大丈夫? 誰かに言付けを頼むのは?
わざわざ持ってきてくれたお団子のお礼すら言えていないのだ。あんなお兄ちゃんみたいに優しくしてくれる人に対して、私から何も言わないのも不義理すぎやしないだろうか。
「お嬢様……?」
考え込んでいた私にメイドさんから声がかかる。それに私はもう一度「大丈夫」と言って、手が汚れることも厭わず、お団子を掴み食べようとした。
口を開き、一口でパクリと行こうとした瞬間。横からビュンッと風が吹いたような気がした。次の瞬間気がついたのは、何かにお団子を掻っ攫られたということ。
何が――――私が視線で追うと、いつも窓辺に遊びに来る小鳥が、床に転がったお団子をくちばしで突付いていた。何度かツンツンとした後、お団子の一部をハクッと食べてしまう。
その様子を見て、私は思わず吹き出した。
「食いしん坊な小鳥さん――――」
だけど、その和やかさは数秒も続かなかった。小鳥がお団子を美味しそうに食べだしたと思いきや、動きが急に止まり、コテンと横に倒れてしまって。
「え? ちょっと――――」
「お嬢様、お近づきになられない方が――――」
メイドさんの制止を払い、私は小鳥に駆け寄る。その場にしゃがむと小さく痙攣しているのがわかった。だけど、それもすぐに止まる。私がそっと両手で持ち上げると、その小鳥は徐々に冷たくなろうとしていた。
「嘘……嘘でしょ……」