白豚王子育成計画〜もしかして私、チョロインですか?〜
そして、色とりどりの花が綺麗な中庭で、贅肉が弾むこと数分。
「グハぁ……リ、リイナ……?」
「何でしょう?」
私が首を傾げると、膝に手を付いたエドワード王子が告げた。
「ひひひ……膝ががが、い、痛い……」
「へ?」
いやいやいや、まだ幼稚園生の朝のジョギングレベルしか走ってないでしょうよ! まぁ、喘息が起きるから、数週間に一回幼稚園に通えても、私は見学していただけなんだけどさぁ。
自重に負けてないでどーにかしろと喝を入れたいところだが、仮にも相手は王子だ。本格的に膝でも壊されようなら、一大事になること間違いない。
私は考える。膝に無理なく、ダイエットに有効な有酸素運動。
思い出せ、思い出せ――――無駄に長い入院生活で読み漁った、数々の雑誌の情報を。
「エ、エドワード王子……それなら――――」
『出会いに繋がる趣味特集? ダイエットにもなり一石二鳥♡』
そんな見出しで特殊されていたのは、乗馬だった。郊外が多いので都心から移動に時間がかかるものの、馬にも優しい紳士的な男性と知り合える――なんて文章に、色々と夢を馳せたのは記憶に新しい。馬が走る時の揺れに耐えているだけでも、腹筋や内股の引き締め効果があり、また動物との触れ合いで癒やし効果もあるのだとか。
「――てことで、エドワード様。乗馬はお得意ですか?」
当然、出会い云々の下りを省いて説明した私に、「なるほど」と同意した白豚王子ことエドワード王子は、どこからか馬を連れてきた。
綺麗な白馬だ。素人目線でも、上等な馬だということがひと目でわかる。
私がそっと手を伸ばすと、その馬は大人しく額を撫でさせてくれた。可愛い。
「リリ……リイナは、馬が好き?」
「触ったのは初めてです。可愛い……て、そんなことは、今はいいんです! さぁ、乗って!」
私が急かすと、エドワード王子は少々不満そうにしながら手綱を引き、鐙に足を掛けた――その時。
ヒヒィィィィィィィィンッ!
……馬が、逃げました。
振り落とされた王子が、ドスンッと尻もちをつく。慌てて駆け寄る近衛兵さん。そして馬を追いかける御者さん。いやぁ、お馬さんの引き締まったお尻が見事だね。
なんて現実逃避している場合ではなく、
「……エドワード様。乗馬は始めてでした?」
てっきり王子たるもの、乗馬の心得はあるものかとファンタジー脳で思っていたのだが……そんな私の気がかりを、王子は一蹴した。
「い、いや……グフ。昔はよく遠乗りしていたよ」
「それでは――――」
「グフフ。体重が増えてから、なんか嫌がられるようになっちゃった」
なっちゃったじゃねーやい。馬にも拒否される巨漢とか勘弁してくれ……。