スイレン ~水恋~
志田は眇めた眼差しをついと外すと、「・・・手助けはしませんよ」と低く呟く。

「分かってるわよ」

軽い溜息と一緒に零した愚痴。

「ついでに邪魔もしないでくれる?あたしのお目付役が面倒ならお兄に言って、辞め」

「お嬢が用済みならこの命に使い途はありません」

風を切ったように遮った声に抑揚はなく。

「捨てて来ますんで、若には無用に願います」

「は?エッ?・・・志田っ?!」

すっと黙礼した志田の影が視界から退()いて。反射的に振り返れば、後ろ姿があっという間に扉の向こうに消える。

慌ててクッションを放り、まさに玄関ドアに伸ばしかけの腕に咄嗟にしがみついてた。

「ちょっと何なのっ、いきなりー!」

「・・・不用品は処分が鉄則でしょう」

「誰もそんなこと言ってないわよ、バカぁ~~っっ」
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