スイレン ~水恋~
「娘が世話になってると聞いたもんでね。面倒かけちゃねぇかと心配してたとこだ」
革張りのソファにふんぞり返り、カラーシャツ姿のお父さんが芝居がかって笑う。菅谷のおじさまといる時と別の、組長なりの風格で。
これ見よがしに日本刀や派手な壺が飾られた客間。黒檀の一枚板で、値打ち物らしいリビングテーブルを囲み、向かい側のお兄は静かに瞑目したまま。ブルーグレーの三つ揃いに淡い色味のシャツを合わせ、図ったみたいに隆二とは対照的だった。
「無用ですよ、叔父貴のお嬢なんですから」
やんわり口角を上げ丁寧に受け答える隆二は、“鷺沢一家の柳隆二”。目の当たりにする機会がなかったもう一つの顔は、giraffeの顔とも違う。
「これも親心ってヤツだ。・・・で、どうする?知っての通り淳人は、梓を猫可愛がりしてやがる。気を揉んじまってしょうがねぇとさ」
置かれたアイスコーヒーに手も付けない内、お父さんが無遠慮に斬り込んだ。
「まあ俺も可愛い娘の連れなら、一生楽できる男にしてやりてぇなと思ってたんだが」
革張りのソファにふんぞり返り、カラーシャツ姿のお父さんが芝居がかって笑う。菅谷のおじさまといる時と別の、組長なりの風格で。
これ見よがしに日本刀や派手な壺が飾られた客間。黒檀の一枚板で、値打ち物らしいリビングテーブルを囲み、向かい側のお兄は静かに瞑目したまま。ブルーグレーの三つ揃いに淡い色味のシャツを合わせ、図ったみたいに隆二とは対照的だった。
「無用ですよ、叔父貴のお嬢なんですから」
やんわり口角を上げ丁寧に受け答える隆二は、“鷺沢一家の柳隆二”。目の当たりにする機会がなかったもう一つの顔は、giraffeの顔とも違う。
「これも親心ってヤツだ。・・・で、どうする?知っての通り淳人は、梓を猫可愛がりしてやがる。気を揉んじまってしょうがねぇとさ」
置かれたアイスコーヒーに手も付けない内、お父さんが無遠慮に斬り込んだ。
「まあ俺も可愛い娘の連れなら、一生楽できる男にしてやりてぇなと思ってたんだが」