スイレン ~水恋~
あと三年もすれば還暦。お兄にもっと貫禄がついた風な面差しに薄笑いが滲み、本音か建て前かどっちともつかない。
小さく固唾を呑んだ。だけど鳴宮浩一みたいな優良物件と本気で結婚させたかったら、今まで黙ってるハズなかったわよね?
「梓が心底惚れて、惚れられた男にくれてやりてぇのも親心だ。ケジメ付ける気があるのか、それだけ聞かせてくれりゃあ俺の気も済む。・・・なぁ柳」
おもむろに言ったお父さんは責めるでも詰めるでもなく。耳を通り抜けた厳つい声が数珠つなぎになって、あたしの中にゆらゆら、ぶら下がる。
隆二が一緒に来るのを知った時、ただの付き添いのつもりじゃないのは分かってたけど。どんな挨拶する気でいるのかなんて。
吸い寄せられるように隣りを仰ぐ。残りの人生懸けても惜しくないって思う男の口許は、仄かに緩んで見えた。
結婚の約束が欲しいんじゃないの。嘘がないならどんな言葉だっていい。いつも笑って隠してしまうものを見せてくれさえすれば・・・!
小さく固唾を呑んだ。だけど鳴宮浩一みたいな優良物件と本気で結婚させたかったら、今まで黙ってるハズなかったわよね?
「梓が心底惚れて、惚れられた男にくれてやりてぇのも親心だ。ケジメ付ける気があるのか、それだけ聞かせてくれりゃあ俺の気も済む。・・・なぁ柳」
おもむろに言ったお父さんは責めるでも詰めるでもなく。耳を通り抜けた厳つい声が数珠つなぎになって、あたしの中にゆらゆら、ぶら下がる。
隆二が一緒に来るのを知った時、ただの付き添いのつもりじゃないのは分かってたけど。どんな挨拶する気でいるのかなんて。
吸い寄せられるように隣りを仰ぐ。残りの人生懸けても惜しくないって思う男の口許は、仄かに緩んで見えた。
結婚の約束が欲しいんじゃないの。嘘がないならどんな言葉だっていい。いつも笑って隠してしまうものを見せてくれさえすれば・・・!