スイレン ~水恋~
5-3
意識が醒めかけ無意識に寝返りを打った。・・・ふと違和感。頬に当たってる肌触りがシーツっぽくない。羽根布団のふんわり包まれ感もどっかに行ってる。

まだ瞼はくっついてる最中、ぼんやり記憶を辿る。・・・・・・あー、あのままソファで転寝しちゃった・・・。

日本酒のハイボール三杯くらいで、秋生ちゃんの半分も飲んでなかったのに。ようやく薄目を開けた。

明るい。いつの間にか朝だ。生まれて初めて自分の足で踏み出した、一歩目の朝。

隆二が帰ってきたらあたしがして欲しいこと全部、叶えてもらうんだった。あたしも隆二が望むことを叶えたいだけ。お兄の籠を出てきたことに後悔はないの。

心細さや不安は考えない、“帰ってきたら”を順に並べて。一番は誕生日のやり直し。タワーみたいなケーキも作ってもらうんだから。

未練がましい眠気を追い払うように伸びをした。お風呂も忘れてたのを、のそのそ上半身を起こす。
< 211 / 293 >

この作品をシェア

pagetop