スイレン ~水恋~
6-序
隆二と二人きりの生活は初体験ばっかりだったけど。・・・自分が器用じゃなかったのをわりと思い知ったけど! 充実してた。もったいなくて無駄に過ごせなかった。
一番の挑戦は、夏の終わりに秋生ちゃんと運転免許試験に合格したこと。泊まり込みの合宿免許で、自分の顔写真が入った免許証を手にできた時は、感動ひとしおだった。苦手な縦列駐車で教官を苦労させたのが懐かしかった。
ちなみに。秋生ちゃんに運転させたら車が凶器になる、ってハルトさんは本気で渋ったんだとか。隆二は涼しそうに『じゃあ、車買っとこっか』って。
だから合宿から帰ったあたしを待ってたツートンカラーの軽自動車は、てっきりご褒美かと思った。贈り主がお兄なのを知った時、どうしても感謝だけ伝えたくて電話をかけた。出てくれないかもしれなかった。
『・・・頑張ったな』
あれから一度も聞けずにいた声は包み込むように優しかった。・・・心配そうだった。嬉しくて、ほんとに嬉しくて。子供みたいに泣いた。ごめんなさいを繰り返すあたしの頭を、見えない掌がずっと撫でてた。
『あず、・・・たまには顔見せに帰ってこい』
鬼の面を外して素顔で笑ってくれた。気がした。
一番の挑戦は、夏の終わりに秋生ちゃんと運転免許試験に合格したこと。泊まり込みの合宿免許で、自分の顔写真が入った免許証を手にできた時は、感動ひとしおだった。苦手な縦列駐車で教官を苦労させたのが懐かしかった。
ちなみに。秋生ちゃんに運転させたら車が凶器になる、ってハルトさんは本気で渋ったんだとか。隆二は涼しそうに『じゃあ、車買っとこっか』って。
だから合宿から帰ったあたしを待ってたツートンカラーの軽自動車は、てっきりご褒美かと思った。贈り主がお兄なのを知った時、どうしても感謝だけ伝えたくて電話をかけた。出てくれないかもしれなかった。
『・・・頑張ったな』
あれから一度も聞けずにいた声は包み込むように優しかった。・・・心配そうだった。嬉しくて、ほんとに嬉しくて。子供みたいに泣いた。ごめんなさいを繰り返すあたしの頭を、見えない掌がずっと撫でてた。
『あず、・・・たまには顔見せに帰ってこい』
鬼の面を外して素顔で笑ってくれた。気がした。