スイレン ~水恋~
「いないよりいる方が梓も寂しくないよ?」

ソファで寛ぐ男の隣りに、すとんとお尻を落としながら。

「でもペットは飼ったことないの」

「放っといても自分のことは自分でする犬だから大丈夫。それにお嬢の言うことしか聞かない忠犬でねぇ」

「・・・・・・いらない」

横目で一瞥。

「可愛くないし、うるさいし、だいたい犬じゃないし!」

「タツオを番犬がわりに置いてくれって、淳人がね」

「うー」

ご隠居サマの印籠みたいにお兄の名前をかざされた途端、反論できない。
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