スイレン ~水恋~
「淳人じゃオマエにやれないのがあったんだよなぁ、忘れてた」

淡く緩んだ口許。細まった眼差しに吸い寄せられた。

「親ってナニするのか訊いたら、梓にしてやってるのと同じだってアリスちゃんがさ。それなら得意だからねぇ」

顔が歪む。いつの間に二人でそんな話・・・!

親を知らない隆二が子供を願ってくれる。あたしに残そうとしてくれる。宝物を増やしたくなったのかもしれないし、そうじゃないのかもしれないけど。

あたしが拒んだら二度は言わない。きっとこれが最初で最後。

「オレがあげたいんだよ、オマエに」

言ってもう一度シーツに縫い止められ、こっちを見下ろす艶かしい笑い顔が涙に滲んだ。
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