スイレン ~水恋~
6ー4
「お疲れ様ですお嬢」
「ただいま」
夜の八時前、セルドォルのアルバイトから戻ると、ガレージで黒スーツの志田が出迎えてくれた。
隆二の車の代わりに、あたしの送迎車だったセダンが停まってる。あの頃はまるで気にしてなかったけど、思い返すといつ乗ってもシートもガラスも、汚れひとつなかった。
「隆二は?」
「・・・明日は鷺沢会長の警護で、今夜は戻らないと。若も出席する支部の懇親会です」
「そう」
トートバッグをあたしの手から抜き取って、玄関に向かう男のあとを歩きながら。ぐっと冷え込んだ夜気に首をすくめる。師走がすぐそこだった。
隆二は出かける前に何も言ってなかったから急だったんだろう。神経質になってるつもりはないけど、櫻秀会の会合を襲撃するバカもいないと思うし、ちょっと安心した。
「風呂は湧いてます」
「ん、ありがと」
実家じゃないのに当たり前にお嬢と世話係に戻る。一生変わる気がしない。
「ただいま」
夜の八時前、セルドォルのアルバイトから戻ると、ガレージで黒スーツの志田が出迎えてくれた。
隆二の車の代わりに、あたしの送迎車だったセダンが停まってる。あの頃はまるで気にしてなかったけど、思い返すといつ乗ってもシートもガラスも、汚れひとつなかった。
「隆二は?」
「・・・明日は鷺沢会長の警護で、今夜は戻らないと。若も出席する支部の懇親会です」
「そう」
トートバッグをあたしの手から抜き取って、玄関に向かう男のあとを歩きながら。ぐっと冷え込んだ夜気に首をすくめる。師走がすぐそこだった。
隆二は出かける前に何も言ってなかったから急だったんだろう。神経質になってるつもりはないけど、櫻秀会の会合を襲撃するバカもいないと思うし、ちょっと安心した。
「風呂は湧いてます」
「ん、ありがと」
実家じゃないのに当たり前にお嬢と世話係に戻る。一生変わる気がしない。