スイレン ~水恋~
去年は遠慮なく誘われ、お店でしっとり年を越したんだった。真夜中に横丁近くのお稲荷さんに初詣するのも、三人の恒例行事になりそう。

「帰ってこないと、ぜーんぶ食べちゃうわよぉ」

「ハイハイ」

自分はソーダ割りを口に運びながら、あやすみたいに笑ってた。

グラスに添えてる指が男っぽくて色っぽい。呷る仕草も、家の中じゃしない咥え煙草も。好きすぎる。どうしようもなく。

「明日は由里子サンのとこ、昼で上がりだっけ?帰ったら買い出し行こっか」

「えーっと、お餅でしょー?パン屋さんでしょー?あと、なに?」

「好きなの買えば?」




何てことのない会話も、いつも甘さが詰まってた。
特別な言葉がなくたって平気だった。
信じられた。

日付が変わる頃には、絶え絶えに隆二の腕の中。
求め合い与え合った。埋め合った。

もうここに入りきらないと思うほど。
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