スイレン ~水恋~
黒い丸石を敷き詰めた人工の小川を悠々と泳ぐ派手な柄の錦鯉。新緑の紅葉が枝を伸ばし、水辺の石灯籠が和の趣を引き立たせてる。ここの中庭は風情があって好き。
川床風のデッキにドレスの裾を広げて座り込む。貸し切りで他のお客はいないし、かまわないでしょ少しくらい。昼下がりの空は相変わらず綺麗に青く醒めてる。見上げてポツリ。
「ほんと、・・・結婚式日和」
「こんなところで黄昏れてるとオオカミに食べられちゃうよ、お嬢さん?」
独り言をこぼした途端の不意の声。驚きすぎて心臓が弾けるかと思った。こう見えてわりと小心なんだから、あたし。
低いけど透った声だった。どこか歌うみたいな。気配がなかったのにいつの間に。最初に目に入ったのは、人ひとり分空けた隣りにすっと立った黒いスラックスの脚。徐々に視線を吊り上げていく。
スーツは三つ揃い、ネクタイは真珠色で。顎から耳にかけての少し骨ばった輪郭、厚くも薄くもない唇。鷲鼻ぽくて、目が。・・・目が合った。お兄の男前ぶりには遠く及ばないけど悪くもない感じ。
髪は後ろに流して撫でつけてあって。纏う雰囲気はやっぱり独特。歳はお兄より上・・・?ていうか。
「・・・誰?」
心の声がだだ洩れた。
川床風のデッキにドレスの裾を広げて座り込む。貸し切りで他のお客はいないし、かまわないでしょ少しくらい。昼下がりの空は相変わらず綺麗に青く醒めてる。見上げてポツリ。
「ほんと、・・・結婚式日和」
「こんなところで黄昏れてるとオオカミに食べられちゃうよ、お嬢さん?」
独り言をこぼした途端の不意の声。驚きすぎて心臓が弾けるかと思った。こう見えてわりと小心なんだから、あたし。
低いけど透った声だった。どこか歌うみたいな。気配がなかったのにいつの間に。最初に目に入ったのは、人ひとり分空けた隣りにすっと立った黒いスラックスの脚。徐々に視線を吊り上げていく。
スーツは三つ揃い、ネクタイは真珠色で。顎から耳にかけての少し骨ばった輪郭、厚くも薄くもない唇。鷲鼻ぽくて、目が。・・・目が合った。お兄の男前ぶりには遠く及ばないけど悪くもない感じ。
髪は後ろに流して撫でつけてあって。纏う雰囲気はやっぱり独特。歳はお兄より上・・・?ていうか。
「・・・誰?」
心の声がだだ洩れた。