スイレン ~水恋~
背は163㎝ちょっとの頼もしい姉を盾に、160に届くか届かないかのあたしは窺うように中へ。

お客はカウンターの端に一人。金髪の若いバーテンダーがこっちを見て、どことなく怪訝そうな顔をした。秋生ちゃんが振り向きざま視線で探るから、首を小さく横に振る。あの(ひと)はいない。

先客とは反対の端側に二人並んで座れば、薄く口角を上げた黒シャツのバーテンダーに馴れ馴れしく声を掛けられた。

「初めて?誰かの紹介?」

「まあね。この()がヤナギさんと知り合いなのよねー」

ざっくばらんな口調で受け答える彼女。東南アジア系っぽい顔立ちの金髪青年はあたしを一瞥すると、オーダーを取ってシェイカーを振り始めた。見た目より、らしく慣れた手付きで。

「残念だねー梓。せっかく会いに来たのに」

聞こえよがしに秋生ちゃんが言うのを。留守で胸を撫で下ろしてもいるし、肩透かしを食ってなんか口惜しい気もしたし。
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