スイレン ~水恋~
組長の娘だろうと、会社じゃお茶出しも雑用も仕事のうち。言葉ほど済まなそうでもなかったけど愛想笑いで受け流し。さっさと撤収しかけたのを不意に志田に呼び留められた。
「今晩、若が一緒に食事をしたいそうですが」
「そう、分かったわ」
「迎えは7時で構いませんか」
「大丈夫。お兄に楽しみにしてるって言っといて」
「・・・承知しました」
「相変わらずの兄妹仲で、若姐さんが妬きやしませんかね?」
冗談めかして笑い声を立てた江上さんは、あたしと志田の間の取り繕ったような空気に勘づいてもなかったと思う。
平静を装い席に戻る。志田が帰った途端、星のお喋りがコソコソ始まった。相槌を打ちながら上の空だった。せっかく大好きなお兄と久しぶりに二人きりなんだから素直に喜ばなくちゃ。自分に言い聞かせてた。
真っ直ぐマンションに戻ったらシャワー浴びて、お兄に見合う服に着替えて。あずは何でも似合う、って褒めてもらうの。
悪いことは考えない。信じてる。お兄なら分かってくれる、きっと・・・!
「今晩、若が一緒に食事をしたいそうですが」
「そう、分かったわ」
「迎えは7時で構いませんか」
「大丈夫。お兄に楽しみにしてるって言っといて」
「・・・承知しました」
「相変わらずの兄妹仲で、若姐さんが妬きやしませんかね?」
冗談めかして笑い声を立てた江上さんは、あたしと志田の間の取り繕ったような空気に勘づいてもなかったと思う。
平静を装い席に戻る。志田が帰った途端、星のお喋りがコソコソ始まった。相槌を打ちながら上の空だった。せっかく大好きなお兄と久しぶりに二人きりなんだから素直に喜ばなくちゃ。自分に言い聞かせてた。
真っ直ぐマンションに戻ったらシャワー浴びて、お兄に見合う服に着替えて。あずは何でも似合う、って褒めてもらうの。
悪いことは考えない。信じてる。お兄なら分かってくれる、きっと・・・!