壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
翌日から私の新選組隊士としての生活が始まった。

朝一番にやることは斎藤先生の着物と袴を枕元に用意して、起こすということだ。

これは私が同室になるのであればせめて何かやりたいと申し出て、斎藤先生からもらった仕事だった。

「斎藤先生、起きてください。
朝餉の支度が出来ているそうです。」

私は何度か斎藤先生を起こそうと、声をかけたり身体を揺らしたりしていたのだが、斎藤先生は「もう少し…」などと言い続け、起きようとしなかった。

「斎藤君、はいりますよ。」

途方に暮れている時、廊下から誰かの声が聞こえた。

私が障子を開けようとしたとき、声の主が先に障子を開けた。

「あれ、君は誰?
まぁ、あとで教えてくれればいいや。

今は一君を起こさないとだから。」

斎藤先生とは真反対のようなしゃべり方をするその男性は私のことに目もくれず、斎藤先生の布団の側まで行くと、帯剣していた刀を鞘から抜いた。

「起きる?
それとも一生起きない?」

声はほんわかとしているのに、殺気を帯びていて、私は離れているにもかかわらず、身震いしてしまった。

「総司、その起こし方はやめろっていつも言ってるだろ。」

さっきまで何をしても起きなかったのに、刀が首筋にあたろうとしたとき、斎藤先生は起き上がった。

「大丈夫。
これ、刃引きしてある稽古用のやつだから、死にはしないよ。
骨が折れるくらいだから。

あ、もしかしたら動けなくなるのかなぁ。

一君、ここにいるウサギのように震えている少年は誰?

間者とかなの?」

私が震えている間に枕元に置いてあった着物と袴をはいたらしく、寝間着から着替え終わっていた斎藤先生があくびを噛み殺しながら、質問に答えた。

「こいつは昨日付けで三番隊に入った杉崎快。
部屋が余ってないから、ここで寝てる。

ちょうどいい、総司。
いつでもいいから、こいつに稽古をつけてやってくれ。

腕はあるが、捨て身なところがあるから、そこを直さないと使い物にならん。」
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