壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
少しして土方先生が私に声をかけた。

「つまり、お前は何かの現象が起こりはるか遠い未来からこの世界に来てしまったと…?」

「はい、そうです。

本当にこれは嘘ではありません。」

私がきっぱりと答えると土方先生は顔を手で覆って「嘘だろ…」と言葉を漏らした。

急に今目の前にいる人が未来の人間だったと言われてそれをすぐに受け入れられる人はいないだろう。

私もここが幕末だと知ったときに驚き、信じられなかったが状況証拠からそれを受け入れたのだから。

私が早くこの世界になじめたのは女優をやっていたから、他の役を演じること、様々な時代の人物を演じることに慣れていたからだった。

しかしそんなこととは無縁の生活を送っている人、近藤先生たちがそれを信じられないのは当たり前なことだった。

「とりあえず、杉崎が未来の人間だと仮定して聞く。

お前はこの先日本がどうなるのかを知っているんだよな…?」

私がこの先起こることを知っていたのであれば、私が未来から来たということを認めよう、と近藤先生は考えたらしく、私にそう聞いてきた。
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