壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
その後近藤先生と斎藤先生も半信半疑ながら「土方(副長)が信じるならば」といい、私がこの時代の人間ではないということを信じてくれた。

「斎藤はこのこと知っていたのか?」

近藤先生はその問いを斎藤先生に投げかけたのか、私に投げかけたのかわからなかった。

私が答えても問題はないだろうと判断し、私は「いいえ、このことは誰にも言っていません。」とはっきりと答えた。

それに付け加えるように斎藤先生も「そんな不思議な話を聞いていたらさすがに報告していた」と言った。

「杉崎、君はこの先新選組がどうなるのか多少なりは知っているということだよね?

それでも君はここに残る覚悟があるの?

覚悟がないといっても脱退は認められないが、それだけ聞きたい。」

新選組の行く末を知っているのにここに残れるのかという問いは私を深く悩ませるようなものではなかった。

「もちろんです。
新選組は未来でも取り上げられることが多いので、多少は知っていますが、私はそれが何であれ、もうこの世界で生きていくとずっと前に決めたので、私はこの命果てるまで新選組に居続けます。」

もう少しすると幕府が朝廷に大政奉還をし、新選組は幕府という親を失い、しまいには朝敵となってしまうのだが、それを知っていても私の意思は変わらなかった。

それを知っているから朝廷側につくのは完全に反則行為だし、何よりも私はここが、新選組が大好きだったからここから逃げるという選択肢はなかった。

「この先どうなるのかを聞いてみたい気もするが、それを聞いたらよくないだろうから聞かずにその時が来るのを楽しみにしよう。

斎藤、君は本当にすごい人を新選組とめぐり合わせたよ。

とても努力家で心がきれいで、思慮深い人を。」

近藤先生は私の意思を聞いて何度もうなずきながら、斎藤先生にも話を振った。

「俺も、杉崎がそんなことを抱えているとは思いませんでした。

でも俺には無理だなって思いますね。
俺だったら未来を知っていたらなるべくいい方にいたいと考える。

それで新選組だって思っているのなら普通だけど、杉崎はそんなことを考えずに、新撰組にいたいからいるって素直に言えるのだから。

今は杉崎だけが知っている未来がいいものだと信じるだけですね。」

「あぁ、そうだな。

斎藤最後にもう一度言う。

何がっても杉崎を無駄死にさせるな。
これは局長命令だ。

お前の命を懸け、杉崎を守れ。
本当にお前が守りたいと思うのであれば。」

その言葉に斎藤先生は大きく頷いた。
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