壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
悪いことは一度起きてしまうと続いてしまうものだった。

徳川慶喜が討幕を恐れ今後も政治の表舞台に立てるように、自らの意思で大政奉還を行ったとされていたのに、実は討幕派の薩摩藩と土佐藩によって仕組まれたものであったということに幕臣であった会津藩、桑名藩、紀州藩の一部の藩士が気づいてしまったのである。

自分たちに不利なように仕組まれたものだった、そして討幕を達成させるためにクーデターが起きた。

こうなってしまうともう誰にも止められない。

旧幕府軍と明治天皇を主体とする新政府軍が争うことは避けられない状況まできていた。

本来、公武合体をしようとした理由、国内で争うことはやめ対外国を視野に入れようという理由はほとんど忘れ去られていた。

旧幕府軍と新政府軍、どちらが先に挙兵するのか、どちらが官軍になるのか、新撰組に関わらず武士たちはその動向を静かに見守っていた。
< 160 / 271 >

この作品をシェア

pagetop