壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
依然として新政府軍による銃撃はとどまる気配を知らなかった。

気がつくと銃撃によって命を落とした旧幕府軍の亡骸がよく目に入るようになっていた。

今のところ、新撰組から死者は出ていないがそれも時間の問題なのではないかと思われていた。

しかし銃撃にはひとつだけ弱点があったのだ。

日が落ちてからは遠くから標的を定めることができないという最大の弱点が。

日が落ちてからも銃を使おうと思えば近くに寄る必要があり、近くに敵がいれば刀で一瞬の隙をついて攻撃することも可能なのだ。

「新選組隊士、いったん撤収!
作戦をたてなおしてから、再度出動する!

本陣へ戻れ!」

土方先生の合図により、私たちは戦うことを止め、本陣となっている旧伏見奉行所へ戻っていった。

ここで土方先生から伝えられた作戦は日が完全に落ちた後に奇襲をかけるというものだった。

夜目が利くものが多いからこそできる作戦であった。

かなりの負傷者は出てしまったものの、まだ旧幕府軍の方が、人数が圧倒的に多かった。

この奇襲が成功したら銃を相手が使っていても勝てる確証があった。
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