壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
戦いの女神が先にほほ笑んだのは私たちではなく、新政府軍に向けてだった。

伏見奉行所の弾薬庫は引火し、奉行所は激しい炎に包まれた。

それはまるで昼間なのではないかと私たちに錯覚させるほど明るかった。

炎の光を利用することを考えたのだろう。

新政府軍は伏見一帯の民家に向け次から次へと発砲をし、民家を炎に包ませていった。

複数か所で火の手が上がり、先ほどよりも明るくなった伏見一帯はまた新政府軍が優位に立ったのだ。

唯一の弱点である暗さを克服したのだ。

明るければ遠くからでも狙うことは可能だった。

また距離をとられてしまったのだ。

そして休むことなく新政府軍による銃撃は続き、ついに新選組の中からも犠牲者が出てしまったのだ。

心臓を撃ち抜かれたその隊士はほぼ即死だった。

その状況を間近で見ていた隊士は相手との力の差を知り、そのまま新政府軍に寝返ってしまったのだ。
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