壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
大阪城を目指す間も新政府軍による銃撃はやまず、私たちは再度窮地に立たされていた。

物陰に隠れながら進み続けたのだが、遠くから狙える銃にとって、それは何も意味のないことだった。

「絶対に背中を見せるな、生きて大阪城を目指せ!
斎藤と杉崎のように互いの背中を守りあえ!」

今も引き続き私と斎藤先生は互いに背を向けるように立ち、そのまま少しずつ他の隊士と同様に進んでいた。

これはお互いで決めたから今も続けているのだが、これは案外効果的だったのだ。

死角をかなり少なくすることができるからだ。

無防備になってしまう背中を何人かで守りあえばそれだけ生存できる可能性も上がる。

しかし無防備になっている背中を預けるということは並大抵の信頼関係ではできないことだった。

相手が裏切る可能性もあるからだ。

実際私と斎藤先生がお互いの背中を預けるようになったのはこの戦いからであり、それまでは「まだ、俺と同等じゃねぇ」と言われ続けできなかったのだ。

この状況でそれができるのか、脱退が多く出ているこの状況で自分以外の相手を信じることができるのか。

新選組の隊士らはそんな葛藤に襲われているようだった。

数分の迷いの後、何組か背中を預ける隊士ができ、そこからは残っていた隊士らも同じ組の隊士と背中を向け、互いに相手の背中を守りあうような構図が出来上がった。
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