壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
そしてまたひとり新選組隊士が亡くなった。

沖田先生である。

沖田先生は日に日に体調を崩すことが多くなり、戦いに参加せずに屯所代わりになっているところで療養していることが多かったのだが、ある日他の隊士らが戦いから帰ってくると血を吐いて息絶えていたのである。

沖田先生の傍らには苦悶の表情を浮かべた松本先生がおり、松本先生の口から「沖田君はずっと前から結核を患っていたのだ」と他の隊士に伝えられた。

沖田先生は誰にも結核を患っているということを言わずに、明るく振舞い続けてひっそりと逝ってしまったのだ。

沖田先生の死に一番涙したのは斎藤先生だった。

一番仲が良かった沖田先生が誰にも病気のことを告げずに死んでしまったことに対して「なぜ気づいてやれなかったんだ」と後悔しながら泣いていた。

私も気がつくべきだったのだ。

どうして沖田先生が結核で亡くなっているということを今まで忘れていたのだろうか。

もし覚えていればもっと沖田先生と話をして、一緒に甘味を食べたかった。

今更後悔しても遅いのだが、隣で斎藤先生が泣いているのを見ていると私も泣かずにはいられなかった。
< 189 / 271 >

この作品をシェア

pagetop