壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
「斎藤先生、この状況を知らずに済んだ沖田先生は幸せだったと思いますか?」

翌日、新政府軍と刀を交えながら私は斎藤先生に声をかけた。

「知らずに済んだのはよかったかもな。

でも、しゃべる暇があったら生きることだけを考えろ、このあほが!」

私が斎藤先生の方に意識を向けた瞬間、隙を狙って新政府軍の一人が思いっきり刀を振りかざし、私を亡き者にしようとした。

そしてそれにいち早く気がついた斎藤先生が自分の刀で攻撃を防いでくれたのだ。

「すみません。
そうですね、さっさと終わらせて生き続けましょう。」

私は背中越しに斎藤先生に声をかけると先ほどまでとは打って変わって素早い動きで相手の鳩尾に小太刀の柄を深く突き刺した。

もちろんこんなことで相手は死なないが、急所をやられたことにより、動けなくなるからそれだけでよかったのだ。

そんな攻防を続け私たちはこの日も戦いに負けたが、死ぬことはなかった。
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