壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
私の言葉に目の前にいた男は声を高らかにあげながら笑った。

そしてそばに控えていた家臣らしき男性に目配せをすると何かを持ってこさせた。

それは私たちが捕まったその瞬間まで使っていた刀だった。

「斎藤、杉崎両名を警部補に任命する。

これは君たちが5年前まで使っていた刀だ。

制服着用時に限り、帯剣を許可する。

その刀で我々の意思に背くものを成敗しろ。

話は以上だ。

後は他のものが細かいことについては説明する。」

私たちは自分の刀を返却された。

鞘から抜いて刀を確認すると5年もの間放置されていたとは思えないほど一切さびはなく、無茶な戦いで若干刃こぼれしていたにもかかわらずその形跡すらなかった。

きっと私たちから刀を奪った後に研ぎ直しをして保管されていたのだろうということがうかがえた。

斎藤先生は「どうして…」と言いたそうな顔をしていたが警察官としての職務を説明すると言われ、私に何も声をかけることができずに、目の前を歩く男に続いて歩いていった。
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