壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
警察官となった私と斎藤先生には立派な宿舎の一室が与えられた。

私がここで生活を続けるには男としての生活を続けろと再度案内をしてくれた男性から言われた。

そしてこの部屋は斎藤先生とふたりで使うようにと付け加えるように言われた。

それに対して私は「はい」と小さく返事をした。

自分たちの部屋の中には予備を含め4着の制服が置かれており、職務につく際は必ず着用するようにと説明された。

そして最後にこれが貴方たちの勤務表ですと一枚の紙を手渡された。

その紙には自分たちを含めた数名の名前が書かれており、定期的に「休」という文字が書かれている以外すべて時間が書かれていた。

「貴方たちには今後、このスケジュールに従って行動してもらいます。

かつて貴方たちがどのような生活を送っていたかはここでは関係ありません。

他の人に迷惑をかけないように必ずこれに従ってください。」

新選組のときには組ごとに休みはあったものの、それは明確に示されたものではなかった。

しかし今は働くときと休む時が明確に分けられていたのだった。

「ひとつ質問があります。

この休みの日は何をすればいいのですか?」

今まで新撰組にいたときは見廻りが休みの日も道場で稽古をしたりして過ごしていたので、ここでも稽古をしていいのだと思っていた。

しかし返ってきた言葉は違うものだった。

「休みの日は休んでください。

休みの日に無茶をしてけがをすると次の日に響き、他の人に迷惑をかけるので。」

「つまり、剣術の稽古をしてはいけないと?」

「貴方は先ほどの話を聞いていましたか?

制服着用時に限り帯剣は許可されています。

今は昔とは違って廃刀令が出されています。
つまり貴方が休みの日に刀を持っているだけで捕まる世の中です。」

「じゃあ、制服を着て稽古をすれば…」

「そう言う問題ではありません。

とにかく休みの日は何もかも忘れて体を休めてください。

そう言ってもきっと貴方は部屋で勝手に稽古をするとか言い出しそうなので、貴方の休みの日は刀を一時的に没収します。」

「えっ…
そんな…」

この言い合いに負けた私は明らかに不貞腐れた表情をしていたのだろう。

私たちの言い合いを聞いた後、斎藤先生はずっと笑いをこらえていたのだった。

「とにかくわかりましたね。

初日の勤務開始は明後日からです。
なのでこの刀は一度没収させていただきます。
斎藤警部補のものも申し訳ないのですが預からせていただきます。」

そう言い残すとその男性は私の刀と小太刀、斎藤先生の刀を手に取り私たちの部屋を後にした。
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