壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
二人きりになった部屋で先に口を開いたのは斎藤先生だった。

斎藤先生はまだ笑いをこらえながら私に話しかけてきたのだった。

「杉崎は相変わらずだなぁ。

どうしてお前はあの場で自分は警察官にはならないって言わなかった?

もう十分お前は戦ったから、ひとりの女性として生活することだって…」

最後の方はまじめな口調で斎藤先生は私に語った。

私は一呼吸おいてから自分の思いを斎藤先生に告げた。

「斎藤先生が好きだから、もう斎藤先生に守り続けられるのではなく、私も斎藤先生を守りたかったから。

だから私は斎藤先生と同じ道を歩んだんです。」

私の答えを聞いた斎藤先生はなぜか頭を抱えながら「どうやって説明しよう…」という声が漏れていた。

そして考えがまとまったのか、斎藤先生は顔をあげ私の方に向き直った。

「愛望、俺は頃合いを見てお前を警察官の職務から外させる。

そしてその時が来たら結婚してほしい。

愛望はもう十分俺のことを守ってくれた。

だから今度からは俺の帰りを待つ、家で俺のことを守ってくれる唯一の人になってほしい。」

突然、斎藤先生から告白された私の脳内は混乱していた。

確かに以前思いは伝わって恋人にはなったけれど、あれからいろいろなことがありすぎて恋人らしいことをしていなかった。

それなのに今急にそんなことを言われて混乱するなという方が無理な話だろう。

「愛望、返事は?」

私がひとりで混乱していると返事を聞きたいと斎藤先生が聞いてきた。

本当にずるい人、そう思いながら私は斎藤先生に思いを告げた。

「今更遅いです…

私はずっとその言葉を待っていました。

斎藤先生、一さんと両思いだって知ったときからずっと…

いつか一緒になりたい、そう思ったけれど戦いのさなかそれは口にできなかった言葉でした。

一さん、こんな私でよろしければ貴方のお嫁さんにしてください。」

最後の言葉を言い終えるのが早いか、一さんに抱きしめられるのが早いかそれはわからなかったが、この日私たちはまた二人の愛を確かめ合った。
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