壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
「おめぇら、話なら待機場で聞いてやる!

今すぐ手に持っているものを捨ててこっちに来い。
さもなくば容赦はしない。」

一さんはじわじわと相手との間合いを詰めていった。

いつ何が起きても対応できるように常に刀の柄をしっかりと握った状態で。

私も一さんの援護をするように浪士の後ろ側に回り込み、相手の退路を防ごうとした。

「廃刀令が出て久しい世の中でなぜおまえらは刀を捨てぬ?」

浪士の一人が私たちにそう聞いてきた。

「制服着用時の警察官は帯剣を許可されてるんだよ!

もちろん、これは真剣だ。
いくら刀の刃が上を向いているからといっても多少は血が出るだろうな。

安心しな。殺しはしない。」

一さんは新撰組にいたときのまるで御陵衛士の粛清をした時のように殺気をまとわせさらに近づいていった。

私も一さんもしばらく刀は握っていなかったのに、一さんの雰囲気は新撰組にいたときと全く変わらないほどに怖かった。

一さんなら逆刃で構えていても簡単に相手の息を止めることはできるだろう、私はそう考え、味方ながらに身震いがした。
< 209 / 271 >

この作品をシェア

pagetop