壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
翌日以降も私たちは警察官としての職務についていたのだが、私たちの知らない5年間のうちにこの国はあまりにも大きく変わりすぎたらしく、あの日のような騒ぎも早々起きず、毎日ただ待機所で何かが起こるのを待っている日々が続いていた。

そんなある日のことだった。

私は待機所で急に倒れてしまったのだ。

実は数日前から何とも言えないけだるさに襲われており、食べ物をほとんど食べていなかったのだ。

それに伴う栄養失調だろうと思われた私はその場にいた何人かの先輩警察官に抱えられるようにして警視庁の救護室へ運ばれた。

このとき、一さんはたまたま他の問題で待機所にいなかったのだが、この後私は医者からとんでもないことを言われたのだった。

「えっ、松本先生ですよね…?」

救護室にいたのはまぎれもなく新選組のお抱え医師だった松本先生だった。

何度もお世話になったわけではなかったものの、最後の方はよく話をしていたので見間違うはずがなかった。

「杉崎さん、久しぶり。

君たちは職務に戻っていいよ。
診察して何も問題なければ少しだけ休んでもらってから待機所へ送り届けるから。」

松本先生はあの時と変わらない優しい口調だった。

松本先生は土方先生たちと蝦夷地へ行ったはずなのになぜここにと私が考えていると、松本先生が口を開いた。

「聞きたいことはいっぱいあるだろうけれど、今は先に診察をしようね。

何か変わった症状とかはある?」

松本先生の言葉に私は思い当たる症状をすべて伝えた。

少し考えた後、松本先生は再度口を開いた。
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