壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
「この子は立派に生んで見せます。

最後に一つだけ聞いてもいいですか?
土方先生たちはどうなったのですか?

私たちのようにとらえられていていまもどこかで生きているんですよね?」

私は一縷の望みをかけ松本先生に聞いた。

松本先生は何も答えることなく、首を数回横に振った。

それは生きていないということを伝えたかったのだろう。

その意図をくみ取った私は落胆した。

どうして自分たちは生きているのだろうと。

「副局長は最期被弾して息を引き取った。

会津が新政府軍の手に落ちたと知ったときに一瞬落胆したものの、最後まで指揮を執ると言い続けてこの世を去った。

私は杉崎さんたちみたいに新政府軍にとらえられ、医者として勤めることを命じられたから今ここにいる。

途中で脱退した永倉君もどこかで生きているらしいけれど、彼の情報は何も入ってこないからそれが本当のこと何かはわからない。」

松本先生の口から伝えられたのは新選組の悲惨な最期だった。

生き残った者は数名いたが皆敵であった新政府軍のもとで働くことを命じられ、屈辱的な日々を送っていると。

そして蝦夷地に行った人たちは松本先生以外誰も生き残っていないと。

私はこの時ほど神を恨んだことはなかった。

どうして人は争いを続けるのだろう、もし争いなどない世界だったら死ななくても済んだ人は大勢いたはずなのに。

そう思ってしまうと私はやるせない気持ちになり、その場で意識を失ってしまった。
< 214 / 271 >

この作品をシェア

pagetop