壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
もう逃げられない、そう覚悟した私はあきらめ、永倉先生とむきあった。

「今朝とは違うやり方で行かせていただきます。」

そう言うと私は右手に刀、左手に先ほど見つけた小太刀を持ち、抜刀した永倉先生の元へ駆け寄った。

右手で相手の急所を狙い、左手で相手の攻撃をかわす。

これは昔殺陣のシーンを撮影したときに、専門家から教えてもらった二天一流の構えだった。

永倉先生が攻撃してくるのを直前でジャンプしてかわし、その勢いのまま永倉先生に向かって模擬刀を振るう。

これがどれだけ続いたのか、やっている本人たちは気がついていなかったが、試合が始まってすでに半刻が経とうとしていた。

どちらが先につかれるかの根競べのようになったこの試合は実戦経験のない私が不利で、もう私の体力は限界に近かった。

「永倉先生、次でお互いに決めましょう。」

私がそういうと、永倉先生は頷いた。

互いに一度間合いを取り、呼吸を整えると互いのほうに向かって走り出した。

見ている隊士からはお互いの刀が相手の脇腹に入ったように見えたほど、どちらがこの勝負に勝ったのかわからなかった。

勝ったのは私だった。

永倉先生の刀は私の小太刀によってぎりぎり抑えられていたのだ。

そして私の刀は見事に永倉先生の脇腹に入っていた。

「そこまで!
杉崎、こっちに来い。」

私たちの勝負を終わらせたのは、斎藤先生の声だった。
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