壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
それから半年後、秋も深まったころに私は産気づいた。

初めての出産に気が気ではないのかなとここに来るまで思っていたが、実際に産気づいてしまうとなぜか落ち着くことができていた。

産婆さんに見守られ、私は出産に向けて最後の仕上げをしている頃、廊下では何度も一さんが部屋の前を行ったり来たりしていて、しまいには産婆さんに「生むのはあんたじゃない、邪魔だからどっか行ってなさい!」と怒られてしまい、しゅんとしながら隣の部屋に入っていったらしかった。

その姿を直接見たわけではなく、声で聞いただけだったが想像するだけでとても面白く、なんだかそれが新選組の最強の剣士の姿だとは到底似ても似つかなかった。

「まだ、生まれるまでには時間がかかりそうだから、休めるときに休んで水も飲むこと。」

私たちの赤ちゃんを取り上げてくれる産婆さんは盛岡でも有名な産婆さんで今まで何人も赤ちゃんを取り上げてきた経験からまだ生まれないと予測をたて私に水分を渡してきた。

私もまだ余裕があり、その水を受け取ると口に入れ、のどの渇きを潤した。

「後半刻ほどで生まれるだろう。

これからは痛みの間隔が短くなって辛いかもしれない。

でもその痛みに耐えれば我が子と出会えるのだから、あきらめちゃ駄目だからね。」

「はい。」

その言葉の通り、私はその後すぐにまた痛みに襲われ、それからはその間隔はどんどん短くなっていった。
< 220 / 271 >

この作品をシェア

pagetop