壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
快と桜が生まれてから、私と一さんはともに協力しながら育児をしてきた。

そしてふたりが一歳と7か月を迎えたころ、私たち家族は函館を訪れていた。

函館に訪れた理由はもちろん土方先生に報告をするためだった。

函館を訪れる前に会津にある近藤先生のお墓にお参りをした後、船に乗り函館まで来たのだった。

土方先生のお墓はまだなく、どこで最期を迎えたのかはわからなかった。

だから私たちは小高い丘に登り、そこで土方先生に報告をした。

「土方先生、私たちは貴方のご命令通り生き残りましたよ。

そしてあのあと結ばれ今はふたりの子どもがいます。

快と桜です。

そしてもう一人、来年には家族が増えます。

私たちは今本当に幸せです。

今は戦争などない平和な世の中が続いていますよ。

いつか寿命がきてそっちに行ったときは私たちがあの後見てきたいろんなことを話しますから、楽しみにしていてください。」

「副局長、最期に貴方に会えなかったのは辛いことですが、きっと貴方は最期まで新選組隊士として戦い抜いたんでしょうね。

今は愛望の言うとおり、本当に平和な世の中になりました。

武士という身分がなくなり、刀を持つこともなくなりましたが一緒に戦ったときの刀は刃引きしてもらって家に飾ってあるんですよ。

だんだら羽織も一緒に家にあります。

俺たちはいつでも一緒に戦った新選組隊士だったということは生き残った者の宿命として必ず後世に伝えていきます。」

私たちはそれぞれ土方先生への思いを告げるとその場に持ってきていた花束を置き、最後に一礼をしてからその場から立ち去った。

最期の時に土方先生は何を思い絶命していったのか私たちには知る由もなかったが、生きて後世に新選組という剣客集団がいたのだと伝えていくと約束をした。
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