壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
私は覚悟を決め、斎藤先生の元へ行った。

「俺、今日何をしろって言った?」

「ざ、座学を…」

静かに怒る斎藤先生はとても怖く、私は小さな声で答えた。

「じゃあ、今してたことは何?」

「な、永倉先生と…」

「お前は何番隊の所属だ?」

「斎藤先生の…三番隊です…」

「永倉は何番隊だ?」

「二番隊です…」

「じゃあ、なぜおまえが混ざってやってた?」

「そ、それは…」

私の声はどんどん小さくなっていき、それに比例して斎藤先生の声はどんどん怒りが込められていった。

「おい、斎藤!
おれがこいつにやろうって言ったんだ。

杉崎は戻るって言ったのに、俺が引き留めたんだ。」

永倉先生は私たちの側まで歩いてきて、私のことを守るような発言をしてくれた。

「ふーん。
じゃあ、二番隊の所属になれば?

俺よりも永倉のほうがいいんだろ?
俺の言いつけは守れないのに、永倉には従うってことは。」

永倉先生の言葉は余分だった、そう思った時にはすでに遅く、斎藤先生は道場を後にしようとしていた。

私は永倉先生に一礼すると、斎藤先生のことを追いかけた。

「斎藤先生、待ってください。」

大声で斎藤先生を止め、私はそのすきに斎藤先生の前まで走っていった。

「すみませんでした!
もう勝手なことはしません!」

斎藤先生に謝ると、許してくれたらしく「次はねぇ」と言ってくれた。

「これ、没収ね。
勝手に他のを持っていくことも禁止。」

斎藤先生は私の左腰に刺さっていた模擬刀と小太刀を抜き取り、そう言った。

「俺が稽古をつけるときと見廻りの時だけ、返してやる。

総司や永倉とはもうやらなくていい。」

私は返してくださいというのをこらえ、静かに頷いた。
< 23 / 271 >

この作品をシェア

pagetop