壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
俺たちの考えは甘かった。

書状を持った隊士に向かって函館府が攻撃を仕掛けたのだった。

俺たちの陣は書状を持ったものよりもはるか後方にいたため、その戦いには参戦できなかったが、もう一つの陣が函館府に勝ったという連絡がすぐに来た。

おそらくこちらに逃げてくるだろう、総予想した俺は陣中に命令を出した。

「深追いはするな。
攻撃を仕掛けてきた場合のみ応戦すること。」

この命令には向かむものは誰もいなかった。

そしてもう一つの陣に敗れた函館府の奴らがついにこちらに現れたのだ。

函館府の奴らは先ほど敗走してきましたと言わんばかりに統制の取れていない状況で俺たちの陣に攻撃を仕掛けてきた。

烏合の衆に負けるような奴はここにはいない。

俺たちはあっという間に戦いにけりをつけた。

もちろん俺たちの勝利で。

敗走した函館府の奴らは本拠地となっていた五稜郭を捨て本州へ向かった。

俺たち、旧幕府軍が五稜郭を占拠するのにかかった時間は移動時間の方が長くわずか5日だった。

江戸城は無血開城で新政府軍に奪われたが、五稜郭は旧幕府軍が無血開城で奪ったのだ。
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