壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
俺はしかめっ面をしながら撃たれた腹部を押さえながら指揮を執り続けようとした。

しかし撃たれた腹部の痛みと落馬したときに受けた衝撃で俺は立ち上がることすらできなかった。

先ほど無事に脱出できた島田も離れたところでともに戦っていたのだが、俺が撃たれたことを知った島田は敵の攻撃をかわしながら俺のもとへやってきた。

「土方さん、今すぐ後方に行って松本先生の治療を受けましょう。

五稜郭まで戻れられれば助かるはずだ。」

そう言って島田は俺の肩を支えて歩き出そうとした。

しかし俺はそれを制した。

「いや、自分の身体のことは自分がよくわかる…

俺はもう駄目だ…

島田、俺の代わりに新選組を率いてくれ…」

腹部を押さえているもののまだ血が流れ続けていた。

俺は本能的にもう助からないということを察していた。

運よくここを逃げられたとしても五稜郭までたどり着ける自信がなかった。

だったらここで死なせてほしい。

俺はそう島田に頼んだ。
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