壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
見廻り中は特に問題が起こることなく、数時間後に屯所へ戻ってきた。

「今日の見廻りはここまでだからあとの時間は各々稽古をすること。

杉崎は俺について来い。」

門の前で解散となり、私は言われるがまま、斎藤先生の後を追った。

「局長、話があります。」

斎藤先生がやってきたのは、近藤先生の部屋だった。

中から、入るように指示され、斎藤先生の後に次いで、部屋の中へ入った。

「杉崎も一緒ってことは…」

「今日まで杉崎のことを見てきて、こいつはもう一人前だと判断しました。

局長、こいつに真剣をもたせてもいいですか?」

「君が判断して大丈夫なら、持たせてもいいと思うよ。」

元治元年五月、ついに私は真剣を持つことが許された。

「杉崎、あとで好きな刀を斎藤と一緒に買いに行くといい。

刀代はこれくらいで足りる?」

近藤先生は私に30両渡した。

「局長、さすがに多すぎます。」

この時代の通貨の価値がわかっていないが、どうやら30両は多いらしく、私はお金を返そうとした。

「返さなくていい。
余ったらふたりで甘味屋にでも行って、それでも余ったら、隊士たちに団子でも買っていってやればいい。」

そういわれてしまい、私はなすすべがなくなってしまい困っていた時に、「もらっとけ」と斎藤先生が言い、近藤先生にお礼を言った後、懐にしまった。
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