壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
「お前はどうしてそんなに熱くなってる?」

「そ、それは…」

局長には言えなかったけれど、自分の気持ちに整理はついていた。

杉崎さんが好きだから、ただそれだけだ。

初めて手合わせをした時から気づいていた。

杉崎さんは女だと。

あの身のこなしは男にはできない。

それにどんなに筋力をつけても誰よりも身体が華奢で、どう見ても男には見えなかった。

一君がどういう意味で女を新撰組にいれたのかわからなかったからしばらく様子をみていたが、あんなに一生懸命に稽古をしている姿を見ていたら、気がついたら今まで感じたことのない気持ちを持っていた。

これが人を好きになることなのかもしれない、俺はそう思ったが今の関係を崩したくなかったから何も言わなかった。

「杉崎さんはいつもはじめく、斎藤といるからよく会う機会があるし、俺が試衛館道場で必死に剣術を学んでいた時に似ているからどうしても他人事とは思えない。」

前半に言ったことは少し苦し紛れだったかもしれないが、後半に言ったことは何も間違っていなかった。

俺は今は新選組隊士の中で剣術を扱える奴という立ち位置にいるが、昔はとにかく突っ込んでばかりでそのたびに師だった局長に怒られて。

怒られては自主稽古を積んで、戦ってはまだだと言われ。

そうやって俺は成長してきたから杉崎さんの姿に昔の自分を重ねてしまうのだ。
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