壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
杉崎さんはいつも通り縁側に座って外を眺めていた。

きっと眺めていると言ってもその眼には何も映っていないのだろうと思いながら俺は声をかけた。

「杉崎さん、見てください!

今日は一杯お団子を買ってきたんですよ。

もちろんあのお店の、杉崎さんがおいしいって言っていたみたらし団子ですよ。

今日は俺のおごりです。
一緒に食べましょう。」

俺はなるべく明るい声を意識して杉崎さんに声をかけた。

それでも反応はなく、俺は杉崎さんの手にみたらし団子を持たせてから自分も食べた。

手に食べ物を持っていて隣で美味しそうに食べればもしかしたら食べてくれるかもしれないと思ったから。

しかし俺が一本食べ終わっても杉崎さんの手は微動だにしていなかった。

このままみたらし団子を回収してもよかったのだが、俺はあえてそれをせずに杉崎さんの膝に手ぬぐいをして餡がこぼれてもいいようにして、次の一本を食べ始めた。

次から次へ美味しそうに食べてみたのだが、杉崎さんは食べてくれなかった。

俺は杉崎さんの手に握られていたみたらし団子も自分の胃の中に納めた。
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