壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
それから少し経った頃、杉崎さんが自主的に筋力をつけているのを見るのは微笑ましかった。

少しずつ重いものをもって感覚を取り戻せるように頑張っている姿を何度も見て、励ましてやろうかと考えた。

でも俺はあえてそれをしなかった。

頑張っているのを邪魔しないようにしておこう。

杉崎さんの心にいるのは俺ではなく羽染君なのだから、と。

恋を知ってすぐに駄目になるというのは正直辛かった。

これが一君だったから俺は許せたのかもしれない。

そう思うのが精いっぱいだった。
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