壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
一君と試合をすると聞いた時、俺は真っ先に審判を名乗り出た。

努力してきた杉崎さんを近くで見たい、そう願ったから。

一君との試合はすごかった。

真剣を使うということもそうだったのだが、杉崎さんが少し前まで心を壊していた人だとは思えないほど、以前の構えをして刀を持つ手にもしっかりと力が入っていることが分かった。

「頑張れ、杉崎さん!」

俺は試合開始の合図をした後、ふたりには聞こえないような小さな声で杉崎さんのことを応援した。

病み上がりじゃなくても一君が勝つのが当たり前なのだから、きっとこの試合も一君が勝つと思っていたから、俺はあえて杉崎さんのことを応援した。
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