壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
そう思った矢先、一君が鬼のような形相で杉崎さんのところへ行き、先ほどのことについて本気で怒っていた。

話を聞く限りだと俺が出動していなかった三条制札事件の時も同じことをやっていたし、そもそもこれはやってはいけないと止められていたことらしかった。

杉崎さんにこんな力があるとは思わず、俺は試合が終わった後もまだ驚きを隠せなかった。

これに関しては二度とやるなという一君の言葉が正しいなと思っていたため、俺はあまり口を出さずにその様子を見守っていた。

一君がいうことは何も間違っていなかったのだが、その鬼のような表情は怖いなと思いつつ、終わるのを待っていた。

少しして二度とやるな一君が言った後に付け加えた言葉に俺は深く頷いた。

「もし、お前が危ない目にあってたら俺や総司が必ず助けに行くから、俺たちは本当の仲間を見捨てるほど薄情じゃないから俺たちを信じろ。」

真剣なまなざしでそういう一君は同性だとしてもかっこいいなと思えてしまった。

こういうことをしれっと言ってしまうからきっと杉崎さんは一君に恋をしているのだろうなと改めて痛感することになってしまったが、一君が言った言葉の中に俺の名前も入れてもらえたことが実は嬉しかった。

だったら俺はこの関係をわざわざ壊す必要はないかもしれない。

これからもふたりを影から見守っていこう。

そして何があっても杉崎さんのことを守れるような人間になろうと決心した。
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