壬生狼の恋ー時を超えたふたりー
この私の捨て身にも思われるような行動に面を食らった新選組の隊士たちは助太刀しようと刀を構え直し、援護しようとしたのだが、それを原田先生は止めた。

「お前ら、手ぇだすな。

これは杉崎と敵との戦いだ。
ここで手を出しても杉崎は喜ばない。

お前らはさっき杉崎が言った言葉にだけ気を付けてればいいんだ。」

なぜ、止めるのか。

新選組の隊士の顔にはそんな表情が浮かんでいた。

しかしこの場の責任者である原田先生にそういわれてしまっては動くと命令違反になるため誰も動けずに固唾をのんで見守ることしかできなかった。

そんな状況に私はお構いなしに相手の懐へ刀を横にしながら近寄ると、下から上へありったけの力を込めて刀を振るった。

私が狙ったのは相手の身体ではなく持っている刀だった。

男はしっかりと刀を握っていたもののこのように来るとは思っていなかったらしく、刀を持つ手が一瞬緩み、男の刀は男のもとを離れ、宙を舞い少し離れたところへ落下した。

私はその一瞬を見逃さずに、相手の首元に刀の刃を添わせ、この戦いに決着をつけた。

男は戦意を喪失し、その場にしゃがみ込み原田先生から渡された縄で手と身体を縛られ、新選組に拘束された。

こうして一晩の戦いは幕を閉じた。

新選組の汚点が残る形で…
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